ロケテストについて深掘りしてみる

ロケテストは、ロケーション(アミューズメント施設を表す業界用語)で古くから行われている、開発中のゲーム評価手法である。本稿では開発中のゲームに対するテストとして代表的な「プレイテスト」「ユーザーテスト」との違いに触れつつ、ロケテストの現場で行われている調査手法を解説する。

1:ロケテスト、プレイテスト、ユーザーテストの違い

a)プレイテスト

制作途上のゲームがその企画仕様どおりに動作するかどうかを確認する、「テストプレイヤー」と呼ばれる職種のプレイヤーたちによるテスト。もともとは「デバッグ」と呼ばれる、プログラム実装上の不具合を見つける作業から発展したもの。すなわち「品質を向上させるためのテスト」である。

b)ユーザーテスト

対象となるゲームの市場投入にあたって企画段階で想定したターゲットユーザーに対し、想定した反応をしてもらえるかどうかを確認するテスト。もともとは広告や市場調査の分野から発達したもの。すなわち「ユーザーが満足したプレイをできるかどうかのテスト」である。

c)ロケテスト

試作段階のゲームを実際の店舗に設置し、どういった稼働状況になるかを確認するためのテスト。a)、b)とは異なり、テスターを募集することはなく、テストに際してユーザーがお金を支払う必要があるため、選択権はユーザー側にある。すなわち「そのゲームで商売できるかどうかのテスト」である。

2:ロケテストの調査手法について

1)定量調査としての「売上調査」

1 日の売上がいくらになるかの調査。店舗で設置稼働中の比較対象機を決めておき、テスト機と比較対象機でそれぞれの売上を調べる。平日/休日の違いを考慮し、平日1 日+土日の3 日間を1 セットとするのが通例。

2)定性調査としての「アンケート調査」

よくある無記名式のアンケート調査。調査項目も一般的なアンケート調査と変わりなく、属性(年代、性別等)とプレイ感想(おもしろさ、難しさなど、4 ~ 5 段階評価+任意コメント)を収集。

3)立ち会い開発者または店員による「ユーザー観察」

ユーザー観察自体は他のテストでも行われているが、ここでの観察行為は他と異なる。プレイ中の様子を観察するだけでなく、その前後でユーザーがどういう行動をとるか、特徴的な様子を「記憶」する。これは他のテストが「そのゲームをプレイすること」を前提としているのに対して、「ロケテスト」は来店ユーザー、特にターゲットユーザーが「そのゲームをプレイする」とは限らないからである。来店ユーザーは(事前に情報入手した場合を除き)テスト対象ゲームが設置されていることを「知らない」状態で入店する。この状態から、多数のゲーム機が並んでいる中でテスト対象ゲームの存在に「気づき」「興味を持ち」「ゲーム機の前に向かい」「お金を投入してもらう」この一連のプロセスが発生する必要がある。さらにはプレイ後「再びプレイしたい」という行動をとるかどうかも注目要素となる。つまりテスト対象ゲームが、ユーザー視点での「プレイ内容」に加え、「プレイアピール」「リプレイアピール」を持つかどうかも観察対象となる。熟練観察者の場合、ターゲットユーザーが「店に入った時点」からユーザー観察は始まっており、単にプレイされた場合だけでなく「プレイされなかった場合」もプロセス経緯を含めて観察される。

3:まとめ

特にロケテストにおけるユーザー観察は、他のテストでも転用可能な要素が含まれていると捉える。他分野でも参考になれば幸いである。