書き続けるには訳がある

今回は私自身『AppBank』というiPhone 系のメディアを運営する中で、ゲームとメディアの関係について思うことを書きたいと思うのですが、それを語る上で外せないのが大ヒットしているゲーム『パズドラ』こと『パズル&ドラゴンズ』です。

AppBank では2012 年2 月20 日のパズドラリリース日以降、パズドラはスマホ業界を代表するヒットゲームになる、と確信し多くの記事を書いてきました。それは単なるレビュー記事という枠組みを超え、攻略記事、体験日記、データ紹介など、多岐にわたっています。AppBank が1 本のゲームの記事をここまで多く書く、ということは異例中の異例でして、運営が始まってからの5 年間で初めての事件です。よく業界関係者に理由を聞かれるのですが、その理由はiPhone 市場をもっと盛り上げるために、それが必要と感じたから、です。例えばですが、任天堂には『マリオ』があるし、PSP には『モンハン』があります。iPhone には何がある? って考えたときに代表するゲームがなかったんですね。

私たち自身、iPhone というプラットフォームの上で事業を行っています。引き続き私たちがAppBank を楽しく運営し、企業として継続していくためには、iPhone 市場のより一層の盛り上がりが必須だと考えていて、そのためにはiPhone ユーザーにこんなにおもしろいゲームがあるんだよ! と『パズドラ』を伝える必要があったのです。私たちは『パズドラ』というゲームに心底惚れ込み、AppBank というメディアのあり方自体を変えるところまで踏み込んでメディアという立場から新しい挑戦をしました。

もちろん気持ちだけでは何ヶ月も1 本のゲームの記事を書き続けるということを継続することはできません。『パズドラ』が素晴らしかったのはその運営やイベントの企画・アップデートなど、ゲームの成長のリズムがユーザーの成長のスピードと非常にマッチしていて、かつ、Android 版のリリースやTVCM のタイミングなど、マスに向かっていく段階的な成長も絶妙でした。私たちがAppBank で公開する多くの記事も非常に多くの読者に閲覧され、1 本の記事あたりのPV も非常に高く、メディアの運営という視点でも満足いく数字が得られたのです。

現在、『ファミ通App』さんや『週刊アスキーPLUS』など、他の媒体でもパズドラの攻略記事の連載が行われていますが、おそらく理由はPV が取れるからです。メディアとして多くの読者に読まれるというのは事業の根幹ですから。

ゲームに限らず、全てのジャンルのアプリにおいて、メディアと関係を作る、ということは非常に重要なことかと思います。私が逆の立場だったとしたら、絶対メディアとは太いつながりをもっておきたいと思います。

まとめに入りますが、私が今回何を書きたかったかというと、ユーザーに支持されるアプリを作りましょう、ということ。運営やイベント、アップデートなどのリズムを企業側の都合ではなく、ユーザーの成長などのリズムに合わせて行い、それをメディアとも連動できるように働きかけましょう、ということです。メディアはより多くの読者、より多くのPV を基本的には求めています。メディアがなぜその記事を書く必要があるのか、という問いに対して、アプリの作り手側がアプリを企画し作る際に、回答をある程度準備しながらリリースに持っていく、ということを確信犯的にやってみたらおもしろいかもしれません。それは卑しいこともなんでもなく、メディア側にとっても嬉しいことですから。