旅行先は二次元世界!
著者: 八重尾 昌輝二次元世界は架空の世界です。しかし今や、架空の世界を現実で展開するゲームが登場し始めています。
あらゆるものは日々変化しています。それはゲームも例外ではありません。「ゲームはこういうものだ」という枠にあてはめてしまうのではなく、どのようにすれば実現可能なのかを考えてみましょう。
なにが現実感を出すのか
現実を現実と認識する要素を分解し、それをゲームの演出に利用することで、架空の世界を現実かのように感じさせることができるようになってきました。現実を演出するのに適した媒体として利用されるのが、インターネットです。
私たちを取り巻くインターネット環境は、もはやなくてはならない存在です。直接対面しなくとも、テキストだけで相手を身近に感じることができる時代になっています。少ない情報でも現実感を出せるがゆえに、架空の存在であっても、生きているかのような演出をすることができるわけです。
国内でこうした演出をしている例として、Twitter があります。架空のキャラクターのTwitter アカウントを作成し、定期的につぶやくことで実在しているかのように振る舞うわけです。
利用できるものはなんでも利用する
特定の人物の情報を得ようとしたとき、その情報は拡散しているのが普通です。TwitterやFacebook、ブログ、投稿した動画などなど。たいていこうした場には、人物のある一面が公開されているだけです。たとえばTwitter では「ゲーム会社に勤めるクリエイター」としての側面。Facebook では「30 代の大学卒業生」としての側面。ブログでは「日常を過ごす趣味人」としての側面、といった具合に。
1 つの情報ソースで、全ての情報が得られるというのは稀なのが現実です。同じことを架空のキャラクターにもあてはめてみたら、どうなるでしょう。
ある物語の登場人物が、ネット上で本当に実在するかのように活動していたら?
調べるほど物語の中だけでは明かされなかった部分を垣間見ることができたら?
普通に話しかけることができて、当たり前のように返事が返ってきたら?
直接対面しなくてもいいなら、実在か非実在かは大きな問題ではなくなります。日常的に触れるメディアを使って現実的な行動をさせることで、架空と実在の境界線をほとんど消滅させることができるのです。
このように、1つのメディアに全ての情報を出すのではなく、メディアの特性に合わせてさまざまな側面の情報を分散し、1 つの物語を複数のメディアで補完し合うことで展開する物語手法は、新しい体験の提供方法として広まりつつあります。
代替現実ゲーム
すでに海外では、こうした物語手法を使ったゲームが多数登場しています。それが、代替現実ゲーム(ARG/Alternate Reality Game)と呼ばれるジャンルです。
架空の物語と登場人物が現実を舞台に展開され、プレイヤーは自分自身の持つあらゆるスキルを駆使してゲームに参加します。『Halo』『Call of Duty』『Portal』『ARMA』、最近ではBungie が開発中の『Destiny』でもARG が展開されています。
国内ではまだあまり話題にはなっていないARG ですが、個人的にはアドベンチャーゲームとの相性がよいのではないかと思っています。たとえば『Steins;Gate』では、ゲーム中に登場するサイトを検索すると実在しているというお遊び要素がありました。ゲームに登場するビルに衛星が衝突する様子を実際に再現したりもしていました。また、『シェルノサージュ』はプロモーション段階から、かなりARG の構造を意識して制作されていると個人的には見ています。
こうしたゲームが普及すれば、「二次元世界に行ってくる!」が当たり前になるかもしれません。もちろんそれを作るのはクリエイター自身です。枠にとらわれずに、どうすれば新しい体験を提供できるのか、広い考えを持つことで、今までにない新しいゲームを生み出すことができるようになるのではないでしょうか。