他では味わえないハッカソンの魅力
著者: 金子 晃介ハッカソンに参加したことがありますか?
ハッカソンに参加したことがない、そんな言葉は聞いたこともないという方は、ぜひこのページでハッカソンの魅力を感じていただければ幸いです。
ハッカソンとは、イベント会場に集まった参加者が、その場でチームを組んで、短い日数(1 ~ 3 日くらい)で集中的に開発を行うプロトタイプ制作イベントの総称です。
私が最初に参加したハッカソンは、オランダで開催されていた「Global Game Jam NL2010」でした。そのイベントでの体験は、当時、技術者同士の交流や技術者教育のより良い方法を模索していた私にとって大変参考になるものでした。当時の日本では、ハッカソンは今ほど知られていませんでしたが、どうにかしてオランダで得てきたハッカソンの文化を日本にも広めていきたいと思いました。そこで、ハッカソンを運営するコミュニティとしてIGDA 福岡を設立し、これまでに多くのハッカソンを運営してきました。これらの経験を通じて感じたハッカソンの魅力について次に挙げてみます。
クリエイターとしての創造性の幅を向上させる環境
本来クリエイターは、幅広い考え方や技法を熟知しているべきだと思いますが、同じ組織に長い間所属していると、自分の考え方や技法が所属している組織の方法で固まってしまうことがあります。普段とは異なる所属の人たちとチームを組んでディスカッションを行うと、自分の所属する組織とは異なる考え方や技法に身近で触れることができます。これは、クリエイターとしての創造性の幅を広げる上でも非常に重要な刺激だと思います。
アイディアの根幹を見極める能力を向上させる環境
アイディアを形にしていく中で、よくありがちな失敗は、いろんな要素を盛り込みすぎて、アイディアの根幹を見失いがちになることです。ゲームデザインで言えば、ゲームの根幹の面白さは実はシンプルなもので、多くの要素はその根幹となる面白さを飾る枝葉であることが多いものです。ハッカソンでは、開発時間が非常に短いため、自分たちのアイディアの中で何が根幹となる部分なのか、そして何から優先して作っていくべきなのか、それを見極める判断能力を養うことができます。
短いサイクルで開発と評価を行う能力を向上させる環境
机上で考えたアイディアが大変すばらしいものだと思っていても、実際にそのアイディアを形にしてみると意外と良くなかったということは多々あります。アイディアを形にし、自分のアイディアに対して評価を行うサイクルを、短い時間で繰り返す習慣を身につけておくことは、アイディアと実装とのギャップを減らし、より良いアイディアの実現方法へと導いてくれます。コミュニケーション能力・リーダーシップ能力を向上させる環境
チームで開発を行う上で、コミュニケーション能力は欠かせません。ハッカソンのように、初対面の人とその場でチームを組んで開発を行うことは、大変高いコミュニケーション能力を必要とします。また、チームのリーダーとなる人は、各参加者の技量も能力もわからない状態で、限られた短い時間でチームのメンバーの特徴を把握して、チームをまとめなければなりません。このようなコミュニケーション能力やチームをまとめる能力は、チームを組んで開発を行う際に非常に重要な能力なので、今後プロジェクトのリーダーを務める若い技術者や学生の教育にも非常に役立つと思います。
失敗をしやすいチャレンジングな環境
チャレンジングなことができる環境では、イノベーティブなアイディアが生まれやすいものです。しかしながら、実際の業務では、失敗のリスクを考慮に入れないといけないため、チャレンジングなことをやれない場合が多々あります。ハッカソンは、失敗しても数日ですし、思い切って普段の業務ではできないようなチャレンジングな試みができます。
ハッカソンの魅力については、まだまだ語りつくせないところが多いですが、もし前述で挙げた項目の中で、「ハッ」とするものがあったら、ぜひハッカソンに参加してみてください。特に、世界最大級のハッカソン「Global Game Jam」は、世界中の人々が参加していますし、非常に有意義な体験ができるかと思います。