プレイヤー視点のゲームデザイン
著者: アーネスト・アダムスなぜストーリーからデザインしてはいけないのか
経験の乏しいゲームデザイナーは、しばしばゲームを作る際に、キャラクターやストーリー、自分たちが試してみたい新技術などから発想しがちです。しかし、これは間違っています。ゲーマーはゲームを遊びたいのです。何か興味深くて、挑戦的で、楽しいことをしたいのです。あなたがゲームをデザインするとき、プレイヤーが見たり、聞いたりする事柄ではなく、プレイヤーが「する」ことから作り始めましょう。プレイヤーにすることや、すべきことについて決定する自由を与えるのです。
ストーリーとは時系列に並べられたイベントの連なりです。もしストーリーからデザインし始めると、プレイヤーに伝えたいことや、プレイヤーに直面させたいことから考え始めることになるでしょう。これは間違ったアプローチです。遊びの要素から考え始めるのです。ストーリーの要素(ナレーション、映画敵演出、台詞など)は後から付け足せばよいのです。
はじめにプレイヤーキャラクターのゲーム内世界における役割について定義しましょう。バレーダンサーなのか? スポーツ選手なのか? ビジネスリーダーなのか? ファンタジーヒーローなのか? もしそのゲームにアバターキャラクターが存在しなくても、たとえば『シヴィライゼーション』などが好例ですが、プレイヤーにはおそらく「すべき役割」があります。『シヴィライゼーション』ではプレイヤーは帝国のリーダーになります。当然プレイヤーがすべきことは、未開拓地の探索やアイテムの売買、交渉、命令、都市や道路の建設などになるでしょう。与えられた役割の中で、プレイヤーが何をすることになるのか、リストを作成しましょう。できるだけ多くの事柄を書き出してみるのです。
中にはそうした役割すら存在しないゲームもあります。ゲーム内世界にプレイヤーが存在せず、ゲーム内世界に抽象的なやり方で作用を及ぼすようなゲームです。これらのゲームはパズルゲーム(『ビジュエルド』や『テトリス』)だったり、シンプルなアクションゲームだったりします。しかしそうであっても、プレイヤーはアクションを行い、何をすべきか決定する必要があるのです。『ビジュエルド』では宝石の位置を入れ替えながらペアを作り出していきます。そしてゲームの他の全ての要素は、このコアメカニクスに関係するものになっているのです。こうした事柄は全て、まずはあなたのゲームに含まれるべきアクションを決定し、それらをあなたのリストに入れることから始められるのです。
これらの「アクションリスト」が完成したら、実際にはおもしろくない要素が含まれていないか調べて、削除していきましょう。たとえば本物の騎士は剣を研いだり、防具を修繕したりする必要があります。本物のパイロットはコースを変更する際に管制官の許可を得なければなりません。ゲームでは、これらは「おもしろくない」要素なので、取り除くのです。
アクションリストは最初の設計図
さて、プレイヤーが能動的に行いたいアクションリストが完成しました。次はターゲットとなるゲーム機のコントローラに、これらのアクションを割り当てていきましょう。プレイヤーが役割を演じる上で、ふりかかる事柄のリストも作成する必要があります。これらは受動的なアクションです。たとえばアクションゲームの中には、ダメージを受けたり、後ろによろめいたり、死んだりといった要素が含まれています。開発チームのアーティストは、これらのリストに従ってアニメーションデータを作成する必要があるでしょう。
一度プレイヤーが演じるべき事柄が決定され、どんな事柄を行うのかがわかれば、アバターがどのような外見なのか(もしアバターが存在すれば、の話ですが)、そしてどこでそのアクションが行われるのか、考える手がかりになるでしょう。たとえばララ・クロフトの役割はトレジャーハンターのそれです。ということは、彼女は長時間地下で過ごすだろうし、危険な場所を探索するのに適した服装をしている、ということになるでしょう。もしプレイヤーの役割がもっと穏やかなものであれば、どんな「戦場」で指示を下すことになるのか、どんな種類の武器を有するのか、それに従って決めなければなりません。まだまだ、ゲームデザイナーにはさまざまな重要な役割が存在します。しかし、もしプレイヤーのアクションからデザインを始めれば、そして常にプレイヤーが何を面白がって遊ぶか考えていれば、あなたは成功するゲームを作る可能性を有しているのです。