ゲーム機の適正価格はいくらか?

プラットフォーマーにとって、ゲーム機本体の価格をいくらに設定するかは非常に悩ましい。ユーザーはゲームを買うために仕方なくゲーム機本体を購入する。そのため1 円でも安くしないと売れない。ゲーム機は最低でも5 年は仕様を変更できないので、できるだけ高性能にしたい。しかし、高性能にするとどうしても原価が高くなる。

小山研究室では、2012 年に行ったゲームユーザー調査で、ユーザーがゲーム機本体の価格をどう評価しているかについて質問してみたところ、大変興味深い結果が得られた。データはWeb 調査会社に依頼して採取したもので、「家庭用ゲーム」「(PC での)オンラインゲーム」「(スマートフォンでの)ソーシャルゲーム」「(いわゆるガラケーの)モバイルゲーム」のうち、少なくとも1つ以上現在利用している10 代~ 50 代の男女それぞれ200サンプル(合計2,000 サンプル)をスクリーニングしたデータである。3DS(15,000 円)、Xbox360(4GB モデル、19,800 円)、PlayStation3(24,800 円)、WiiU(ベーシックセット、26,500 円)、PlayStation VITA(29,980 円:調査時の価格)の5 つのハードについて、価格を明示した上で1(安い)~ 5(高い)の5 段階で回答してもらい、4、5 と回答した人(=高いと回答した人)の割合を調べた。その結果、ハード性能と関係なく、ハード価格が上昇するとともに高いと回答する人の割合が比例的に上昇した。

また、ユーザーを「家庭用ゲームのみ遊ぶ」「オンラインもしくはソーシャルゲームのみ遊ぶ(=家庭用ゲームでは遊ばない)」「家庭用ゲームとオンラインもしくはソーシャルゲームの両方遊ぶ」の3 グループに分けて集計したところ、次の結果が得られた。

  1. 高いと回答した人の割合は、全てのハードに対してオンライン・ソーシャルのみ>家庭用のみ>両方の順となった。

  2. 近似直線の傾きの大きさ(=価格変化への感度)は逆に、両方(価格1,000 円上昇あたり、高いと思う人が3.2%増加)>家庭用のみ(1,000 円あたり2.9%増加)>オンライン・ソーシャルのみ(1,000 円あたり2.5%の増加)の順となった。

この結果からわかるのは、次のとおりである。

  1. オンラインゲームもしくはソーシャルでしか遊ばず、家庭用ゲームで遊ばないユーザーは、ゲーム機の価格に対して非常に厳しい。今回の結果だと、たとえ価格を0円としたとしても、高いと回答する人の割合が約11%残る。

  2. 家庭用ゲームとオンラインもしくはソーシャルゲームで遊ぶ人は、ゲーム機の価格に対して比較的寛容で、価格が下がったときの反応も一番大きい。この層はゲームのヘビーユーザーであり、ゲーム機への支出をさほど苦に思っていない層である。この層に対しては家庭用ゲームとオンラインゲーム・ソーシャルゲームは共存可能である。

調査時ではPlayStation VITA が値下げ前だったが、ゲームを日常的に遊んでいる層から見ても80%近くの人が高いと思われており、ハード販売が苦戦していたのは当然である。また、1 万円値下げして19,800 円となってからはハード販売が好転したが、この価格だと高いと感じる人は約半分程度まで下がるので、こちらも納得のいく結果である。

なお、多くの人が気になっていると思われるスマートフォンだが、契約形態によって本体受け渡し時の支払い額が大きく異なるので調査が難しい。今回の調査では、参考としてiPhone5 に対しても価格を明記せずに同じ質問に回答してもらったところ、高いと回答した人の割合はちょうど50%だった。これは、ゲーム機の本体価格としては20,000 円程度に相当する。iPhone5 の端末料金は一番安いもの(16GB、ソフトバンク)でも50,000 円を超えていることから考えると、携帯ゲーム機がスマートフォンと伍するのは相当大変である。