ゲームプラットフォームの過去と未来
著者: 柴田 真人ゲーム業界の過去からの歴史を簡単におさらいしてみます。
- ファミコンの登場TVゲームビジネスの急拡大。
- PC エンジン、メガドライブの登場プラットフォームへの不満から新しいテクノロジーを利用した機器が登場。ビジネスモデルや技術力不足から衰退へ。
- プレイステーション時代に突入新しいビジネスモデルと、環境の変化へ対応し大ヒット。大容量本格ゲームの環境整備が行われた時代。技術力の急速な高等化と高コスト化による開発体制の変革、開発会社の淘汰と海外デベロッパーへの移行。有名IP ゲーム開発が活発に。中小のゲーム会社は主に受託に。
- i モードのスタートチープな画質、低容量の中でゲームの本質的な面白さなど工夫が求められるゲームが多く登場。新たな企業が新しいチャンスをものにする(インデックス、サイバード、フェイス、HI、Access、Gmode、ドワンゴなど)。
- i モードビジネスの急拡大とコンソールゲーム業界の衰退Java ゲームのスタートによってゲーム業界が本格参入。i モードゲームも高コスト化の時代に突入。
- 国内ではPS2、海外ではXBOX が大きく市場を獲得国内のゲーム開発会社は徐々に力を失う。世界では任天堂と一部の会社以外ゲームのマーケットを取れなくなっていた。
- 2006 年頃からi モードの公式サイトにかげりキャリアインターネット網の「オープン化」とモバゲータウン、GREE の携帯サービスのスタート。
- Wii、DS が世界中で大ヒットコンソールゲームが一時期息を吹き返す。しかし海外デベロッパーとの技術力の差は大きく、多くの会社は国内ビジネスにとどまる。
- モバゲー、GREE のオープン化モバゲー、GREE がそれぞれ『怪盗ロワイヤル』(モバゲー)や『釣り☆スタ』(GREE)でビジネスを急拡大するが、それだけでは限界が。ガラケーの限界と海外でのスマートフォン(iPhone)のスタート。
- オープン化の限界突破一時期ソーシャルゲームの限界が見えかけていたが、そこへカードバトル+ガチャによる巨大ビジネスが登場。スマートフォンの売れ筋のコンテンツは全てカードバトルという状況に。巨大IP の獲得合戦が激化。
- 『パズドラ』効果による、ネイティブへの高い注目カードバトルにも限界が見え、海外もなかなか難しい。第二のパズドラを狙う動きが活発化するが、今後の方向性を模索中……。
歴史は繰り返す。
イノベーションのジレンマとプラットフォームの急拡大、IP 獲得合戦とプラットフォーム競争の激化と衰退……そして新プラットフォームの登場。
プラットフォームは成熟と共に寡占状態となり、収益が上位の会社に集中してしまう傾向が強くなります。
その結果、途中参入してきた会社や中小デベロッパーにはなかなか収益が回らなくなり、有名IP や高コストで制作されたコンテンツとの差は中小制作会社には埋めにくく、結果としてここで戦えない企業は淘汰されます。
一般的に開発会社が自社IP で開発を始めると、コンソールの場合1 年~ 2 年以上先でしか収益化されません。モバイルに比較的インディーズが参加しやすいのは開発期間が短いというのも1 つの理由です。もっとも、海外のようにファンドが積極的にゲーム会社に投資してくれればよいのですが、日本ではゲームは水もの的な印象があり、なかなかゲームファンドもうまくゆきません。
このように、日本の制作環境やファンドの環境がインディーズ系の会社にとって不利なため、生き残るのは巨大企業や勝ち組企業の受託専門となり、インディーズとしての可能性や、価値や技術力を失ってしまいます。
これは日本のゲーム業界が繰り返してきたことで、この根本的な問題が海外との開発力の差を生んでしまっている1 つの原因ではないでしょうか?
今必要なことは、各プラットフォーム自体のさらなるオープン化の促進と、公平なファンド機能の強化、オープンな技術交流などが重要と考えます。プラットフォーマーは常に公平であるべきで、常にオープンであるべき。プラットフォーマーが自分たちのみの収益に強くフォーカスし始めたとき、その衰退が始まります。