ゲームサウンドは新しい楽器
著者: 田中 孝新しい楽器とは?
サウンドの流行は時代や場所の特徴を表しています。
新しい素材加工技術、例えば金属加工ができたら、金管楽器ができたように、楽器は時代の最先端技術の応用からできています。
ゲームサウンドと楽器の似ている点
ゲーム機のサウンドは、インタラクティブです。ユーザーがコントロールし反応する。
楽譜や録音/再生メディアと違い、「楽器」に似ています。
ゲーム機(やスマホ)等のサウンドは最先端で魅力がある反面、未定義な部分も多く、新たな仕組みやルールを開拓する必要があります。
インタラクティブと即興演奏
録音/再生メディアではできないサウンドの楽しみ方として即興演奏がります。
さまざまなジャンルのサウンドに多少は含まれています。
楽器を改造するわけではありませんが、演奏形式を即興しやすい形にしてジャムセッションを行って楽しむ場合もあります。
インタラクティブとは即興演奏に近いこと、そして新しい楽器上でのルール(形式)を楽しみながら行うことです。
リズミカルである事の心地良さ
うまい演奏は、心地よいリズムを奏でます。
逆に下手な演奏は、ピッチやリズムが悪く、テンポや間の悪い展開は快適さを阻害します。ゲームでリズムを壊す例としては、データをダウンロードしたり、圧縮を展開したり、オブジェクトの大量生成、大量破棄などがあります。
チューニングにかかる時間をうまく扱う
楽器で例えるなら、演奏開始までのチューニング(ピッチ合わせ)がいかに素早く手軽に行えるかといった感じです。三味線などの演奏を見ていると、話している合間にさりげなくチューニングしていたりしますね。
チューニングが合う、気持ちよさ、といったものはゲームにも当てはまり、例えばユーザーに気づかれずに次の準備をひっそりと行うといった技術があります。
ピアノというフォーマット
ピアノであれば、頑丈な金属フレームによって、長期間チューニングが安定している状態を保てます。曲ごとにチューニングを変更するのは手間がかかるので平均率が開発されました。
平均率という発明は、リスナーが許容出来る音程のずれをフォーマット(規格、形式)化したところにあります。手軽に扱えることにより表現方法も進化しました。
ピアノのフォーマット化をきっかけに、印刷技術や輸送技術の発展による教則本などの音楽教育の確立や、メトロノームの発明によるテンポの基準化などの様々な要素が絡み合って、技術や情報の共有が一般化しました。
技術共有して、もっと盛り上げたい
ゲーム開発も一般の手に広がり始めています。
かっこいいものができたら皆で賞賛する。
そのとき、何がどのようにかっこいいことかを知っておく必要があります。
そのために、技術共有の場がある事は非常に大事です。
特にゲームサウンドでは、個人の持つ貴重な経験やノウハウに頼る部分が多くあります。
食べて行くために一時的に守りたい部分もあるかと思いますが、その先にある大きな展開と比較して、意味のある技術の共有が必要です。
そこに放つ情報以上により多くの役に立つものが得られるはずです。
ゲームサウンド/オーディオ技術についてはSIG-Audio、ゲームジャム、サウンド助け合い所@facebook、インタラクティブミュージック研究会など。
他にもサウンドの分野においてはマニアックながらも活発な勉強会が多くあります。
自分が行っている「新しいサウンド(新しい楽器作り)の仕事」であるミドルウェアもゲームサウンドの集大成となっています。みなさまの貴重なご意見、ご要望に支えられています。これも活用して素晴らしい演奏をして頂き、開発者(演奏者)もユーザー(リスナー)も皆が幸せになれることを望みます。
ゲームサウンドという楽器がオーパーツみたいなことにならないよう祈ります。