とにかく手を動かせ!新しい物を作れ
著者: 堂前 嘉樹このたびは書面でですが、自分の価値観についてお話しさせてもらう機会を頂きました。
本当に嬉しいです。ありがとうございます。
ゲーム業界で働き15 年近く経ち、その間に座右の銘として刻むことなどが本当に多くなってきました。
1 人で97 人分語りたい気分なのですが(笑)、ここは心を鬼にして1 つに絞って話をしようと思います(97 人分を聞いてみたい方は、ぜひ、飲みに誘ってください(笑))。
最近働いていると、物を作るよりもまず理屈から入ってしまうことが多く見られる気がします。
作る前に考えてから行動するのは良いことだと思うんですが、考えるだけ考えて、なかなか行動に移さないことも多いのではと思います。
そしてグダグダになって、最終的に時間がかかるのは良くないですよね。
昨今ではゲーム開発の規模も大きくなっていて、関連する人間も多くなっています。
物を作る際に事前に関連する人に確認を細かくとっていくと、それだけで時間が大きく取られてしまいます。
我々はクリエイターですので、「物を作る」という最高のスキルを全員が保持していると言えます。
ですので、自分がよくやる手法として、試作段階でもいいので軽くアルゴリズムや描画技術を作り、それを見せてから説明することをよくやります。
「百聞は一見にしかず」という言葉があるかと思うんですが、見られるものを見せると説得力が格段に高まり、進行もスムーズに進むことが多かったです。
自分のことになってしまいますが、CEDEC 等で講演をさせてもらうことが少々あり、そこでしゃべるのが上手いとか、そういった印象を与えてしまうことがあるのかもしれませんが、本来、しゃべるのがとても面倒に思っている人間です。
なので物を作ってから見せて、というのは本当によくやります。
何しろしゃべらなくていいんですから。(誤解がないように言っておきますが、社会人としての最低限の振る舞いはキチンとしていると思いますよ(笑)。)
ですので自分で物を作り、それを提示してから方法を決めるのも進め方としてはアリだと思います。
良く思うこととして、考えて事前計画を立てて行うのは前にも書いた通り良いことだと思うんですが、考えすぎて計画倒れになるのは良くないと思います。
とにかく、「方法論」にこだわりすぎるのは危険だと考えています。
我々はクリエイターでもあるのですが、商品を作ってリリースする「商売人」の側面も持ち合わせているので、最終的に商品をお届けするユーザーさんを第一優先に考えるのが大事です。
開発者のエゴはある程度は捨てなければなりません。
「方法論」で話が逸れますが、自分は最近ゲーム作りが学問化し過ぎていかないかということを危惧しています。
昔のゲーム開発から考えると関連セミナーや書籍も増え、情報も多くなる半面、見慣れない数式や用語等が多く見られるようになってきました。
取っかかりとしてこれらの作り方の方法に乗り、作っていくのはいいと思うんですが、作り手が「作り方の新しい情報待ち」になったり、「方法以上のことを進んでしようとしない」となったりするのは好ましくないです。
せっかく「物を作る」「物を生み出す」という素晴らしい能力を持っているので、これらの方法に完全に乗っかるのではなく、少しアレンジして使うとか、方法は参考にとどめて新しい発明を行うなどとする必要があります。
例えば画像処理で考えて、物理的に正しい挙動で現実的に正しい絵を生み出すアルゴリズムがあっても、処理負荷が高く、最終的にゲームとして快適さが失われる場合は、あえて「正しい計算」を捨てる必要があります。
それは何より、ユーザーのためです。
とにかく、我々は物を生み出せる素晴らしい能力を持っているので、全員がそれを有意義に使えるようになるといいなと思います。
それが日本のゲーム業界の進歩につながると考えています。